特別対談企画「いつも眠るまえに」

山下由 × 板倉光隆 × 如月萌

インタビュアー/田口遥佳(Pityman)

写真/あまんめい

前回も大変好評だったこのコーナー。今回、「いつも眠るまえに」パンフレット掲載のために5月の始め、対談を敢行いたしました!

その対談の様子を特別に、少しだけお届けいたします。

 

対談へは作・演出を担当する山下 由、Pityman作品への出演が今回で6回目となる板倉光隆さん、

そして、今回物語の主軸として生きる如月 萌さんの3人が揃いました。


 山下 由(やましたゆう) 作・演出

演出助手経験を経てオーストラリア、ロンドンに短期演劇留学をする。帰国後、2010年にPitymanを旗揚げ。三作目以降すべての作・演出を務める。 2013年、2014年度若手演出家コンクール優秀賞受賞。

 


板倉光隆(いたくらみつたか 俳優、声優、ナレーター、演出家

大沢事務所所属。劇場アニメ「時をかける少女」(津田功介役)、アニメ「遊☆戯☆王アーク・ファイブ」(柊修造役舞台「クリスマス・キャロル」他、外画吹き替え、CMナレーションなど出演多数。板倉さんはPitymanの初期作品「トマトと、」から今回が5度目の出演!!山下が全幅の信頼を寄せ、出会うたびに進化するその新たな魅力を、進化したPityman作品で是非ご覧下さい!劇場でお待ちしております!

 


---由くんと萌ちゃんの出会いはどこですか?

山下:砂地?

如月:砂地!

山下:演劇集団砂地。

如月:役者で出ていて、由くんは舞監だった。

山下:『RUR』という作品で。

 

---なぜ今回、出演してもらおうと思ったんですか?

 

山下:「ハミング イン ウォーター」で萌ちゃんと一緒にやったというのがあって。今回のこの作品は難しいなと思ったし、

技量がある人とか信頼関係があるとか、お芝居に対して献身的でいてくれて信頼がおける人がいいなっていうのはあって。

 

--それは今回の役ありきでお願いしたんですか?

 

山下:うーん、お願いした時は役ありきではなかったと思いますよ。

如月:私が「出たい出たい」って言ってたからだよね?(笑)

 

山下:うーんそれもあるけど、どんな芝居になるかは決まってなかったので。どういう芝居にしようかなって思ってた時に、

真ん中にこういう人がくるなってなり。僕は普段、誰にしようかなって時に、声をかけてる時はその人の役ってなんとなくしか

決まってないし。芝居の内容とかも「どんな内容なんですか?」って聞かれて、「○○です」って答えるんですけど、

そんなのは書き終わる頃には変わってるっていうのは経験からわかってるんで。一応説明するけど、「あんまり意味ないぞ」って

思いながら喋るんだけど(笑)今回、いろんなことをまた一緒にできたらいいなっていうのはあって、オファーした時は真ん中に置く

ってことを考えていたんだと思います。

 

---それは板倉さんにオファーした時も同じだったんですか?

 

山下:板倉さんに関してはある程度、こういう役だっていうのはありましたね。

板倉:いつも話してるしね(笑)

山下:結構喋ってますもんね(笑)

如月:もう打ち合わせ済みなのね(笑)

板倉:そうそう、前の芝居の時からね。

如月:ちょっとまって、もーーーう早いよう!

山下:(笑)。うん、そういうのはありましたね。

 

---二人から見た、今までと今回の山下由作品の違い、みたいなものはありますか?

 

如月:私が関わってきた作品は今まで2作品だけなんだけど、その中でも由くんの変わり様は作家として、演出家として、

目覚ましい変化を遂げているなあという印象。「アラル」くらいから、そういう手の付け方をしなかった作品へ手を付け出したな、

と勝手に思っている。

 

---手の付け方をしなかった、っていうのはどういう?

 

如月:「アラル」の前ってすごく身近な感じがするのね。友達とか家族だったりとか、自分の生活の中で共感できる、

密接な関係性だったりするものから始まったりしてるんだけど。最近のものはその関係もありつつの、ひとつ置かれている状態

とかが変わってきたのかな、と思います。

 

---板倉さんはどうですか?

 

板倉:毎回ね、キツいです。

(一同笑い)

 

---「何キツい」ですか?

 

板倉:まず、本人を目の前にして言うのはアレですけど。台本を読んだ時に、どうすんだこれ?って。いろんなことで。

テーマとか着目するものと、設定とかはすごく面白い。それは何気ないことでなくて、あ、これもしかすると面白いぞと思うんだど。

それを立体化するときに技術とかが必要だと思うけど、大変だなって思う。普通の芝居だったら台本もらって台詞覚える、

でいいんだけど。

由くんのはいいところ行けそうな物なんだよね。そこに於いては一緒につくってるって感覚が強いので、作業がまたしんどいなって

思いますね。

 

---さらにもうひとつ上に行くってわかっているからこその。

 

板倉:やっぱり舞台を観てる方が目の前で起こっていることを理解して、楽しんでもらえないといいアイディア出したって、

いい本を書いたって、いい芝居をしたって、たぶん納得してもらえないと思うんだよね。そこらへんを突き詰めていけば、

すごい良い作品になると思うんだよね。

 

---由くんはどうですか?毎回少しずつ書いているものは変わってきているとは思っているんだけども。

 

山下:毎回作品をつくる度に、自分ではここまではできなかったな、とかあるので。書くにしても、演出をするにしても、作品を創る度に

「前はここまではできなかったな、思いつかなかったな」というのは多分にあるので、その変化が楽しいというか。自分や作品が

前に進むスピードとか力強さというものが、変わってきているなと思います。

 

---先程テーマという言葉が出てきましたが、今回は「代理出産」という事柄が下敷きになっています。こういったことって賛否両論があって扱いなども難しいことだと思うのですが、みなさまはどうですか?

 

板倉:怖いよ(笑)

如月:言われるの嫌だよ!!(笑)バシバシと!まぁ、お客さんはお金を払って観に来ていただくので何を言われたって文句言えないじゃない(笑)

人間だもの!でもそこに関して私は由くんを信頼しているので、どう言われても、というのはあるかな。それに考えないわけはないし、

やるにあたって。そして稽古をしていく中で、嫌っていうほど考えるわけじゃない。だからもう、そこでどう捉えられるかは、

仕方がないと思う。

板倉:テーマはね、色々なものがあると思うんだけど、由くんもみんなもそうだと思うけど、何がみせたいかって、

ドラマがみせたいわけじゃない?そこで起こっている、その状況に立たされた人、そうじゃない人。右に進んだ人、左に進んだ人、

どこにも行かなかった人。その人たちがどう生きていったかっていうのを見せたいわけだから、そのために稽古をしてる感じだよね。

肉付けをしたり。だから「テーマがこれで、こういう風に思ってます」っていうのを押し付けたいわけではなくて。

そういう環境とか状況に置かれた人がどういう風に生きているかっていうのを、丁寧につくっていければなって思います。

 

---やりとりとかを。

 

山下:やっぱりそういう種類のことって怖いなって思うんだけど。でも真摯に生きようとしているっていうことに関しては、

否定できないってことはないですけど、どんなことをやっても傷つく人はいるし、傷ついちゃうことはあると思うし、

それは全然本意ではないんですけど。でも僕や、僕たちは、こういう場所で真摯に生きようとするってことに何か感じるものがあるし、

そういう時にできることは、テーマがどうこうってことではなく、どの作品に対しても真摯に取り組んでいくしかないってことですね。